「ねじの豆知識」 六角ボルトの基礎知識 Vol.4 「本体規格品」と「附属書品」

藤本産業は締結資材「ねじ」の専門商社です。あまりに身近で存在を意識しない「ねじ」ですが、とても奥深い世界が広がっています。ねじの世界を少しでも味わっていただけたら嬉しいです。
今回の「六角ボルトの基礎知識Vol.4」は現在進んでいる規格の移行にまつわるお話を「『本体規格品』と『附属書品』」と題してお伝えします。

Vol.1 六角ボルトの基礎知識
Vol.2 六角ボルトの ねじ山
Vol.3 強度区分
Vol.4 「本体規格品」と「附属書品」
Vol.5 締結・用途・バラエティー

日本国内のメートルねじの六角ボルトは基本的に“JIS B 1180”という規格に基づいて製造されています。2014年4月21日付で国際規格(ISO規格)と統一する事を目的に、“六角ボルト(JIS B 1180)及び六角ナット(JIS B 1181)の規格の改正”が行われました。その規格に沿って製造されたボルトが「本体規格品」、それまで使用されていた規格は「附属書」とされ、その規格に従って製造された品は「附属書品」とされています。技術的内容をそのまま存続させることとしたものの、「新しい設計では使わないことが望ましい」旨が明記されました。
「本体規格品」と「附属書品」にはいくつかの変更点があります。ここでは主なボルト形状の変更点についてご説明します。

「本体規格品」と「附属書品」

六角ボルト本体規格品
六角ボルト付属書品


部品等級

本体規格の六角ボルト・ナットには製品の寸法、形状、仕上がり状態によって区分した部品等級A、B、Cがあります。幾何公差も規定され、より標準化と精度のレベルが上がっています。


本体規格の六角ボルトは「強度区分」によって「部品等級」が決まる

「鋼4.8」の六角ボルトは、附属書では「仕上げ程度」上、中、並の3種類があります。一方、本体規格では「部品等級C」1種類のみになります。 同様に、「鋼10.9」の六角ボルトは、本体規格では「部品等級A」1種類のみとなります。


座面

本体規格の部品等級AとBのものについては、頭部裏面にワッシャーフェイス(座)が付きます。


頭の高さ(図面 k)

M22を除き、附属書に比べ本体規格品は頭部が若干低くなりました。


二面幅(図面 s)

M10、M12、M14、M22の4サイズにおいて二面幅が変更になっています。

六角ボルト・六角ナットの組み合わせの明確化

本体規格では設計で必要な六角ボルトの強度を決めると、JIS B 1052-2により組み合わせる六角ナットの強度が決まります。また、六角ボルトに組み合わせる六角ナットは、組み合わせ表より高い強度区分の六角ナットに代替できます。

六角ボルトとこれに対応する六角ナットを組み合わせることで、ねじ山のせん断破壊を起こすことなく、ボルトの強度を最大限利用し最大の締付け力を作用させることができます。近年、六角ボルトの降伏点まで締め付ける方法が出現したことや、ねじ山のせん断破壊に対する抵抗力をより高くする必要性から、形状、寸法、強度を含む機械的性質などが試験結果に基づいて決められています。同時に最適の材料を経済的に使用する点にも配慮がなされています。

規格は改定されましたが、今でも流通品の多くの部分は附属書品で、本体規格品はあまり使用されていません。ただ、今後は本体規格品への切替えが進む可能性もあるので、購入の際には注意が必要です。

附属書品との混同を防ぐ為、藤本産業株式会社では本体規格商品へは大箱と小箱へ“本体規格IS”のラベルを貼り付け識別しています。

JIS本体規格品が推奨される理由
● 六角ボルト・ナットの組み合わせによる締結の信頼性が向上します。
● 世界調達、国際標準化への対応を加速させます。

本体規格への移行について詳しくはこちら(六角ボルト、ナットの附属書品から本体規格品への切り替えガイド:ねじ商工連盟発行)をご覧ください。

「ねじの豆知識 六角ボルト Vol.4」では六角ボルトの「本体規格品」と「附属書品」の違いついてお伝えさせて頂きました。また、ねじ業界で取り組んでいる「本体規格品」(ISO規格)への移行についても触れさせていただきました。お楽しみいただけましたでしょうか?

次回Vol.5六角ボルトシリーズの最終回となります。六角ボルトの広がりについて取り上げさせていただきます。

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