「ねじの豆知識」 エンザート Vol.2

私たち藤本産業は締結資材「ねじ」の専門商社です。様々な「ねじ」をご紹介し、ねじの世界を少し味わっていただけたら嬉しいです。
今回は雌ねじ補強用インサートナット「Ensat® ―エンザート―」ご紹介のVol.2 “形状” です。


Vol.1 「エンザート」とは
Vol.2  形状
Vol.3 相手材ごとの適性
Vol.4 下穴の設定
Vol.5 エンザートの工具と機械を用いた挿入
Vol.6 エンザートのハンドツール挿入

エンザートのタイプ


エンザートには大きく割溝タイプ三つ穴タイプ、そしてそれら以外の特殊タイプの3タイプがあります。

基本形

三つ穴タイプ(307型 / 308型)

写真 308型(標準タイプ)

割溝タイプ(302型

写真 302型(標準タイプ)

汎用性がより高いのは三つ穴タイプ(302型)です。
外周ねじ山が割溝タイプより低く若干肉厚で強度が高まっておりトラブルが生じにくいです。ですからサイズがない場合を除き、三つ穴タイプを使用することをお勧めします。

割溝タイプ(短寸タイプ307型 / 長寸タイプ308型)は容易に切り粉除去ができるので便利ですが、構造上挿入される割溝部分が内側にたわむ可能性があります。小さな下穴径で使用する場合や相手材が硬い場合にはたわみによる加工不良や締結不良を起こす場合があります。幅広いサイズ展開ですので三つ穴タイプに欲しいサイズがない時にご使用ください。

小外径タイプ

三つ穴(347型 / 348型

写真 348型(三つ穴小外径タイプ)

割溝(303型)

写真 303型(割溝小外径タイプ)

三つ穴、割溝それぞれの標準型に比べ同じ呼び径に対して外径が小さくなる小外径型(割溝303型、三つ穴347 / 348型)があります。外径が小さいため各種強度が低下します。スペースに制約がある場合を除き、標準型を優先的に使用することをお勧めします。

付加機能付

ピン付タイプ(317型 / 318型)

写真 317型(短寸タイプ)

307型 / 308型の外周にエンザートを挿入後に、エンザートの側にピン穴(半周分)をドリルで開けハンマーでピンを打ち込むための溝を設けたタイプです。
高振動部分での使用や高トルクでの締結でもエンザートが緩むことを防止します。また、ボルト着脱の頻度が高い部分では戻しトルクを高めます。短寸タイプの317型と長寸タイプの318型があります。


チップフリータイプ(337型 / 338型)

写真 337型(短寸タイプ)

切り刃が三つ穴止まり穴なので、挿入時に出る切り粉をこの止まり穴のポケット(チャンバーと呼びます)に閉じ込めます。
挿入の初め(喰い付き時)の僅かな切り粉は外に出ますが、大部分はポケットに収まるので切粉除去の工程が不要にできます。短寸用337型と長寸用338型があります。

※ 相手材が金属の場合は最大下穴径にて下穴をあけた上、エンザート専用タップでエンザート長さの1/2の前タップが必要となります。 ただし、硬度の高い材料は使用できない場合があります。


六角内ねじタイプ(307-2型 / 308-2型)

写真 307-2型(短寸タイプ)
写真 六角内ねじタイプ専用工具 610-2型

内ねじが六角形をしているため、先端が六角形状の610-2型専用工具や六角レンチを使用すれば工具への着脱に回転動作が必要なく、作業時間の短縮を図れます。また反転機構のないドリル等も使用できるのも利点です。 樹脂材に使用すれば、六角レンチ等でリサイクル時の分別処理が簡単に行えます。
従来のハンド加工用・機械加工用の工具も他のエンザートと同様の方法で使用できます。
エンザートの埋め込み加工については将来取り上げます。

特殊タイプ

ねじ塑性変形タイプ(305型) 

写真 305型

可塑性の高い樹脂全般に使用します。切り刃を持たず相手材を塑性変形させて目ねじを形成し切粉を出しません。
金属材料には使用できません。



超粗目外ねじタイプ(309型)

写真 309型

硬質・軟質木材、パーティクルボード、軟質樹脂に使用します。通常は割溝(切り刃)を下に(挿入側)して切削式(セルフタップ)で使用します。
特に柔らかい相手材に対しては 割溝を上に向けてねじ塑性成形式として使用します。

今回は外観の相違とそれぞれの機能の特徴をご説明させていただきました。次回は相手材ごとの適性についてご説明いたします。

「エンザート」に興味をお持ちの方はどうぞこちらから弊社へお問い合わせください。

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