「ねじの豆知識」 ナットの基礎知識 1 ナットとは?
今回のねじの豆知識は、「ナット」の基礎知識シリーズの第1回、働きや使い方の基本をお伝えします。「ナット」は、ボルトや小ねじ等の「おねじ」と組み合わせて対象物を固定するための重要な役割を果たします。
ナットの基礎知識
Vol.1 ナットとは? 働き・使い方
Vol.2 「六角ナット」の規格
Vol.3 様々な機能を持つナット
Vol.4 「六角ナット」の作り方
Vol.5 「六角ナット」製造技術・機械の歴史
ナットとは?
ナットは、ボルトや小ねじと組み合わせて、部材同士の固定や締め付けに使われます。ナットと言って特によく知られているのは六角ナットです。皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
一口にナットと言っても様々な形状のものがあります。結局「ナット」とは何なのでしょうか?
ナットは簡単に言うと「めねじ」のある締結部品です。ナットには円筒状の穴があり、その内面にねじ山(めねじ)が刻まれています。ボルトや小ねじの軸(円筒)の外側のねじ山(おねじ)と組み合わせることで結合します。
※ ボルトについて詳しくはこちらのシリーズ記事をご覧ください
ナットはボルトや小ねじと組み合わせる際に、平ワッシャーやスプリングワッシャーも必要に応じて組み合わされます。
ねじ締結において「おねじ(ボルト)」と「めねじ(ナット)」は主要な要素です。それに対してワッシャーは補助的な役割を持っています。そのため、不要な場面では省略されます。
ワークにあけた穴にボルトの軸を通し、軸の先のおねじとナットのめねじを噛み合わせて被締結物を挟み込むことで締結します。ナット(あるいはボルト)を回すと移動して挟み込んだワークを圧縮します。ワークが圧縮力に抵抗することで次第に軸が引き延ばされ、互いの弾性力が均衡して「軸力」として保持されます。
この軸力によりボルトやナットの座面とワークの間、またねじやボルト・ナットのねじ山の間に摩擦力が生じ、締結状態が維持されます。このように、ねじによる締結には、ボルトの軸の「おねじ」と噛み合うことになる「めねじ」が不可欠です。
おねじ部品はワークにタップされためねじに噛み合せることで締結できるので単独で使用できますが、原理上ナットは単独では使用されません。
ナットは、例えば薄板に直接めねじを設けることができない場合などでも利用されます。薄板にナットをプレスしたり溶接したりしてめねじを設置します。また、鋳物や木材のめねじを補強するナットもあります。
※ 溶接できるのは専用の “溶接ナット” だけです。普通のナットを溶接することは決して行わないでください。大変危険です。
さらに、手で締めたり緩めたり、吊り下げたり、重量物を支えたり、緩み止めの機能を持つナットもあります。
六角ナットの寸法・向き・配置
六角ナットの寸法
六角ナットのサイズはめねじの直径で呼び(図面のd1)、これを「呼び径」といいます。基本的に呼び径は、はめ合わせるおねじの径が基準となっています。例えば「M5」や「M8」という具合に表記し、頭に付いている「M」は「メートルねじ」を意味します。M5であればめねじの谷側の直径が5mm、M8なら8mmということです。
ナットの呼び径(めねじの谷側)はノギスでは測りにくいです。それで一番簡単でお勧めのナットサイズの確認方法は、確かめたいナットと同じ呼び径のボルトや小ねじとはめ合わせてみることです。
ねじ山について詳しくは“「ねじの豆知識」 六角ボルトの基礎知識 Vol.2 ねじ山”をご覧ください。
六角ナットの図面の寸法mが高さです。そして、図面sの寸法は二面幅と呼ばれています。この二面幅がスパナやソケットレンチ等の工具のサイズ示します。ボルト・ナットはねじの呼び径で表されますが、工具のサイズは二面幅で表されます。そのため、「それはねじのサイズなの?それとも工具のサイズなの?」と混乱することがあります(笑)。
六角ナットの向きと配置
締結するときに六角ナットはどこに配置しますか?
ナットはボルト頭とは反対側の、一番外側に配置します。ナットが片面取りであれば面取りの無いフラットな面を、座があるならそちらの面を着座面(接触する側)とします。両面取りのナットの場合には、表裏の区別は必要ありません。必要であれば被締結材とナットとの間に以下のようにワッシャー類を配置します:(被締結材)→(平ワッシャー)→(スプリングワッシャー)→(ナット)
締結の際、ボルトとナットのどちらを回すべきでしょうか?基本的にはナットを優先することが推奨されます。それによってボルトに傷がつきにくく、ボルト破断の危険を減らせます。また、ナットの方が軽量であるため回しやすく、電動工具の充電も長持ちします。しかしながら、ナットに工具をかけることができない場合、ボルトを回しても大きな問題はまず発生しないでしょう。
第一回はここまでです。第2回では六角ナットの「規格」に迫ります。