「ねじの豆知識」 ナットの基礎知識3 様々な機能を持つナット
『ねじの豆知識 「ナット」の基礎知識』の第三回は機能を付加した様々なナットの話です。
ナットの基礎知識
Vol.1 ナットとは? 働き・使い方
Vol.2 「六角ナット」の規格
Vol.3 様々な機能を持つナット
Vol.4 「六角ナット」の作り方
Vol.5 「六角ナット」製造技術・機械の歴史
これまでナットは、おねじに篏合させて被締結物をクランプする、円筒穴にめねじを持った締結部品であることを見てきました。この「おねじと篏合するめねじ」という基本の機能に加えて様々な要求に応える多様なナットが流通しています。いくつかをご紹介いたします。
クリンチングナット/ウェルドナット
ワークにめねじを刻むことでもナット無しでのねじ締結が可能ですが、部材が薄くてめねじをタップできない場合があります。そんな時には、薄板にクリンチングナットをプレスしたり、ブラインドナットをカシメたりします。また溶接用のウェルドナットを利用することもできます。ただし、危険なため通常のナットを溶接することは厳禁です。
ねじ山を補強するナット
鋳物やアルミ、樹脂や木材といった柔らかい素材に埋め込み強固なめねじとするタイプのナットがあります。ハンマーなどでの打撃による打込み式や下穴へ回転させながら挿入するセルフタップ式、また、専用工具によるタップ穴への挿入するワイヤー形状ものなど、相手材や埋込方法によって様々な形があります。プラスチック製品に圧入するタイプもあります。
緩み止め機能付き
ねじによる締結の優れた点は、ワークを傷つけること無く簡単に固定や緩めができることです。弱点は振動や衝撃などで意図しないときに緩んで外れてしまうことです。この緩みへの対策がなされた様々な「緩み止めナット」があります。楔(くさび)の原理を利用して勝手にゆるみ回転させないものや、締結させたボルトとナットをピンやワイヤーを使って一体として緩み回転させないもの。また、ナット本体にゆるみ回転を押さえる金属板(ばね)やナイロン部品をかしめたプリべリングトルク形 と呼ばれるものや、広い着座面と振動を吸収するようねじ山への工夫を施したものなど多様です。
プリべリングトルク形ナット
JIS B 1056に 『固有のプリべリングトルク発生部の効果によって、はまり合っているおねじ上を自由に回転せず、かつ、締付け力又は圧縮力に依存しない回転抵抗を持つナット』と定義されています。下の写真のSLナットやナイロンナットが該当します。
手締め
必要な強度で締め付けるために基本的には工具を用いるのですが、蝶ナットやノブナットのように手だけで絞めたり緩めたりできる操作性の良いナットがあります。医療機器や介護用品、家具などに用いられています。握り玉は操作レバーの先端に利用されます。
スペーサー・支える
複数の電子基盤を積層するためのスペーサーとして使われたり、自動販売機を支えるために使われたりします。見えないところで静かに働いています。
ここで紹介しきれなかった個性派のナットは、スタンダード品だけでもまだまだたくさんあります(笑)。
適切な形状と素材のナットを用途に合わせて選び、適切な方法で使用することで、安全かつ確実に部品を固定することができます。プロジェクトに最適なナットをお探しですか?下のフォームからどうぞお気軽にお尋ねください。
次回は、「ナットの作り方」です。引き続きお読みください。