「ねじの豆知識」 ねじ精度(等級)
今回の「ねじの豆知識」は皆を悩ませる「ねじ精度(等級)」についての考察です。
ねじ精度は、ねじユーザーサイドの皆さまやねじメーカーサイドの皆さまどちらの立場においても、日ごろから注意を払っておられるポイントと思います。
悩みどころは
①ねじ精度をどれに指定するか?
②どの工程、どの状態でそのねじ精度になっているか?
ではないでしょうか?
精度グレードの違うねじゲージで検査すれば、不合格になる可能性があるのは当然です。また、ねじの成型加工時は合格しても、熱処理や表面処理はねじに影響あたえるため、ねじが完成品となった時には不合格となってしまう場合があります。
検査で不合格となれば、ねじメーカーとしては製品を納入できなくなってしまいます。一般スタンダード品ならほかに回すことも可能でしょうが、「図面品」や「加工品」と呼ばれるファスナーであればそうした対処はできません。また、ねじユーザーの立場では、必要な部品が期日に入荷せず、生産計画が狂ってしまいます。いずれの立場であっても大きな損失を被ることになります。
では、こうした事態を避けるためにはどうしますか?
ねじ精度を指定する際に、「熱処理前ねじ精度6g」や「表面処理後ねじ精度4H」のように、「どの時点で」「どの公差(精度)を適用するか」を明確に指示することです。こうすることで受入検査時のトラブルを最小にすることができます。
「どの時点でどの精度を適用するか」についての認識のずれは、供給側とユーザー側とのコミュニケーションが不足すると容易に起こります。図面で「熱処理前ねじ精度6g」や「表面処理後ねじ精度4H」のように明瞭に伝えるなら、こうしたトラブルは避けられるでしょう。
しかしながら、精度をガチガチに固めてしまうとファスナーを生産できなくなるリスクがあります。製作できたとしても非常にコストが掛かり、製品自体が成立しなくなることも考えられます。公差の設定についてはいろいろな側面からの考察が必要不可欠です。
ねじ公差が問題となるケースでは、ねじユーザーサイドとねじメーカーサイド、両者間でのすり合わせ作業が大変重要です。藤本産業ではねじ公差が問題となりそうな時には、ユーザー様とねじメーカー様と当社の三者で多面的に分析し、徹底してすり合わせすることを心がけています。
「ねじ」の“製造側の常識”は、ねじを“利用する側の常識”と一致しないことがあります。そのギャップを埋める“ちょっとした配慮”が、大きなトラブルを避けることにつながります。
今後も設計者の皆様、そして、購買担当者の皆様の日々の業務に役立てていただける、「細かすぎるかもしれないけど役に立つ“豆知識”」をアップして行きたいと考えています。「ねじの豆知識」が皆さんの「ねじ」のトラブル解消の「気付き」となれたら幸いです。