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「ねじの豆知識」 六角ボルトの基礎知識 Vol.5 六角ボルトの締結・用途・バラエティー

藤本産業は締結資材「ねじ」の専門商社です。あまりに身近で存在を意識しない「ねじ」ですが、とても奥深い世界が広がっています。ねじの世界を少しでも味わっていただけたら嬉しいです。今回の「六角ボルトの基礎知識Vol.5」は六角ボルトシリーズの最終回、「六角ボルトの締結・用途・バラエティー」と題して私たちの生活の中に在る六角ボルトの様々な形についてお伝えします。

Vol.1 六角ボルトとは
Vol.2 ねじ山
Vol.3 強度区分
Vol.4 「本体規格品」と「付属書品」
Vol.5 締結・用途・バラエティー

六角ボルトでの締結

六角ボルト単体で用いることはほとんどありません。多くの場合、被締結部材に予め空けておいた穴にボルトを通し、反対側からナットを入れて、部材を挟むようにして固定するといった使い方をします。

取り付け部材をボルト頭と反対側にあるナット(や雌ねじ)で挟み込んで“圧縮【クランプ】する”ことで六角ボルトは締結します。

六角ボルトは非常に硬く変形しないように思えますが、ナットがねじ込まれた際にボルトの軸は引っ張られて伸び、取り付け部材は圧縮されます。そしてボルト・被締結物においてそれぞれの“弾性力”により元の形に戻ろうとする力が生じ、互いに反発しながら均衡し保持されます。このボルトの軸に蓄えられる力が“軸力”と呼ばれます。そして軸力が大きくなるほど強い締結と言えます。

締付け方法は、スパナやめがねレンチ、ソケットといった工具で頭部の外側から締付けます。

頭部の外側から締付けることで十字穴リセスのプラスドライバーなどで締付ける小ねじ類に比べると強く締結することが可能です。

頭部の全辺を用いてトルクを掛けることで強く確実に締結することができます。また、十字穴付の小ねじ類に比べるとトルクをかけやすいので、径の小さなボルトであっても強く締付けることが可能です。反面、ソケットを使用してもボルト頭の外側に工具を当てるスペースが必要になるため、高密度に配置することには不向きです。

ねじ径は呼び径3mm程度のものから100mmを超えるものまで幅広く存在しており、大小様々な機械類、家屋・高層ビルなどの建築関係、橋梁工事その他土木関係など、非常に広い分野で用いられています。

多種多様な六角ボルト

通常の六角ボルト以外にも、様々な六角ボルトがあります。用途に応じて使い分けることで、作業の省力化やトータルコストダウンが図れます。


小形ボルト

通常の六角ボルトに比べて頭部2面幅が小さくなっています。頭部が小さいので見た目がスッキリします。小型化、軽量化に有効です。


フランジボルト

頭部の裾にぐるっとフランジ(スカート状のつば)が付いている六角ボルトです。フランジ付六角ボルトやフランジ付ボルトとも呼ばれます。フランジにより着座面の面積が広く面圧を抑えることができ、高トルクで締結した際のボルトのめり込み(座面陥没)防止や、緩み止めになります。また長穴や少し大きな穴に対してもそのままで使用可能でワッシャーを組み込む必要がないため作業効率が上がり、人為的ミスを減らすこともできます。


トリーマセムス

六角ボルトに初めから座金が組み込まれています。座金の穴よりもねじ径のほうが太いため座金が脱落する心配はありません。座金を組み込む手間が省けることや、脱着時に座金を紛失する心配がないので、作業効率のアップに有効です。組み込まれている座金の規格や組み合わせ(平座金のみ、平座金+スプリングワッシャー etc)によって幾つか種類があります。


六角ハイテンションボルト

一般的な鋼材よりも引張強度を向上させた「ハイテン」や「高張力鋼」と呼ばれる鋼材で作られたボルトです。主に、橋梁・鉄骨構造物など建築分野において、かつてのリベット締結に変わる締結方法として使用されています。 “ボルト”という名称ですが、ワッシャーとナットがセットされているのが一般的です。


ガス穴付六角ボルト

六角ボルトの軸方向(ねじ頭から先端部分)まで貫通穴を空けたボルトです。この貫通穴は主に真空装置などにおいて締め付けた際にねじ底に溜まるガスを抜くためのものです。貫通穴付きボルトとも呼ばれています。


シールボルト

六角ボルトの座面にニトリルゴムのリングがピッタリとはめ込まれています。このリングがシール材の役割をはたすので、組立の際に別途パッキンを組み付けたりシール材を塗布する手間を省くことができます。

この「Vol.5」で六角ボルトシリーズは終了いたします。最後までお付き合いくださりありがとうございました。今後も「ねじの豆知識」シリーズを楽しんでいただけたら幸いです。

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