「ねじ」の豆知識 エンザート Vol.1
私たち藤本産業は締結資材「ねじ」の専門商社です。ですから取り扱い商材の締結資材 「ねじ」とその関連商品です。「ねじ? だけ!」と驚かれるかもしれませんが、実は奥深い世界が広がっています。私たちが取り扱っている様々な「ねじ」をご紹介しながらその世界を少し味わっていただけたら嬉しいです。
今回はケー・ケー・ヴィ・コーポレーション株式会社製の雌ねじ補強用インサートナット「 Ensat® ― エンザート ―」に注目します。
Vol.1 「エンザート」とは
Vol.2 形状
Vol.3 相手材ごとの適性
Vol.4 下穴の設定
Vol.5 エンザートの工具と機械を用いた挿入
Vol.6 エンザートのハンドツール挿入
エンザートとは
エンザートは軽合金、樹脂など直タップのねじ山がつぶれやすい母材へ、母材に開けた下穴へ直接埋め込むことで「雌ねじ」を成型する“自力切削式”セルフ・タッピング・インサートと呼ばれる製品です。
なぜこうした製品が必要なのでしょうか?
私たちの身の回りの様々な製品が小型化・軽量化を図るために軽合金や樹脂などへの素材の置換、薄型化が図られています。そして生じる「雌ねじ」の強度や耐久性の不足。その解決策として使用されるのが「インサート」や「インサートナット」と呼ばれる埋め込み式の締結資材です。また、ねじバカ【ねじ山がつぶれてねじが止まらなくなる状態】になってしまったねじ穴の補修にもインサートは広く用いられています。
冒頭にご紹介しましたように、エンザートはインサートナットの切削タイプに分類されます。
主にアルミ合金や樹脂など、母材へ直接タップして形成した「雌ねじ」ではねじバカを起こし易い比較的強度の低い素材に挿入して、ねじ部の機械強度を補い信頼性の高いねじ締結を可能にします。
また、ねじバカを起こしたネジ穴をねじの呼び径を変えることなく同じ場所へ修復することもできます。
エンザートの特徴
“セルフ・タッピング”―自力切削式―インサートであるエンザートは、挿入される際に自らタップ加工をするため、母材に下穴加工さえすれば直接埋め込むことができます。挿入前工程は下穴加工のみ、タップ切りは必要ありません。挿入の作業性に優れ、セルフロック機能を持つため引抜きや緩みに強いという特徴があります。
ケー・ケー・ヴィ・コーポレーション株式会社様のエンザート紹介動画です。
エンザートは外側と内側のどちらにもねじ山を持つ円筒形をしており、切り刃として働く “三つ穴” または “割溝” があります(一部の特殊タイプを除く)。
切り刃により鋳鉄、アルミ合金や可塑性の高い樹脂などの母材を切削して雌ねじを成型し、エンザート外周の外ねじ(雄ねじ)が母材としっかり噛み合うことで固定されます。
さらに切り刃の間のねじ山がエンザート自身のテーパー角によって楔の様に働き、逆回りを食い止めるセルフロック機能を果たします。
挿入作業は専用工具を用いて機械加工やハンド加工を容易に行うことができます。また、専用工具がなくてもボルト・ナットと組み合わせてハンド加工ができることも強みと言えます。
専用工具での機械加工
専用工具でのハンド加工
六角ボルトを利用したハンド加工
エンザートには様々なタイプがあり相手材によってを使い分けます。
次回は使い分けるために知っておくべきタイプ別の特徴について詳しくお伝えします。
「エンザート」に興味をお持ちの方はどうぞこちらから弊社へお問い合わせください。