「ねじの豆知識」 リベット 第二回 ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベット)

「ソリッドリベット」は、古くから利用されている最もシンプルなリベットの基本形です。今回はこの「ソリッドリベット」について調べてみましょう。

ねじの豆知識 リベット 
第一回 リベットとは
第二回 ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベット)
第三回 中空リベット(チューブラリベット)(近日公開)
第四回 ブラインドリベット(Blind Rivet)(近日公開)



ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベット)とは?

典型的なタイプのリベットです。最も古い基本的なタイプで信頼性の高いファスナーです。

ソリッドリベット

ソリッドリベットの基本的な使い方は次のようです。接合させる部材を重ね合わせて下穴を開けた後、リベットを挿入します。頭部を当て盤などで押さえて、圧縮空気を利用したリベットガンでかしめ、頭と反対側の先端部分を変形させて締結を完了します。

あるいはプレス機を用いることもできます。下穴に挿入したリベットの軸方向から大きな圧力を加えてかしめ、部品同士を結束します。

ソリッドリベットは締結の際に全体が押しつぶされるため、部品との隙間をリベット軸部が太くなり埋めることで、強く締結できます。

ここからは、JIS規格“冷間成形リベットJIS B 1213-1995”をもとに、ソリッドリベットの基本を調べてみましょう。


冷間成形リベット(Cold headed rivets)
JIS B 1213-1995

冷間成形リベットの「冷間成形」は、リベットの製造に際して冷間(常温)で塑性加工して頭部を成形することを意味しています。締結時に冷間(常温)でかしめることを意味してはいません。


種類・形状・サイズ

頭部の形状は、①丸、②小形丸、③皿、④薄平、⑤なべ、の5種類が定義されています。

丸・小形丸(小形丸は頭が丸より小さい)
なべ

リベットの形状及び寸法は5種類ある頭部形状毎に、呼び径(軸径d(単位はmm)と同じ数字)と、適用される長さ、また、呼び径に対応する【頭部直径dk】、【頭部高さk】、【首下の丸みr】、などが定められています。皿リベットの【皿の角度θ】は呼び径によって変わります。呼び径1~8までは90°、10~14までは75°です。また、参考値としてリベットを差し込む【穴の径d1】が載せられています。


材料

鋼リベット、 ②黄銅リベット、 ③銅リベット、及び ④アルミニウムリベット が規格として定められています。


鋼リベット
SWCH6R〜SWCH17R  
引張強さ 343 N/㎟以上


黄銅リベット
C2600W、C2700W又はC2800W 
引張強さ 275 N/㎟以上


銅リベット
C1100W 
引張強さ 198 N/㎟以上


アルミニウムリベット
4040引張強さ 
78N/㎟以上


材料はこのように定められていますが、その外の材料は、受渡当事者間の協定により使用することができるとされています。

こうしてJIS規格を調べてみることで、多様な用途に合わせて頭部形状やサイズ、材料のリベットを選択し、使用することができる環境が整えられていることがわかります。さらに、ユーザーの希望により、規格にないサイズ・形状・材料による冷間成形リベットも製造されています。


参考:熱間成形リベット(Hot headed rivets)

常温で成形する冷間成形リベットに対して、製造時に素材の変態点以上の温度で塑性加工によって頭部を成形したものを「熱間成形リベット」と呼びます。この熱間成形リベットは、第一回で取り上げた、設置時に900℃から1,100℃程度まで加熱して打鋲する“熱間リベット”とは異なるものです。

JIS には B 1214-1995で、一般用、ボイラ用及び船用の鋼製リベットの規格として「熱間成形リベット」規格がありました。ただし、この規格は2022年4月20日に廃止されました。また、熱間成形リベットの材料と指定されていた「SV330」「SV400」も、その規格は現在廃止されています。

では、「熱間成形リベット」JIS B 1214-1995がどんな規格だったのかも、少し覗いてみましょう。


種類・形状・サイズ

頭部の形状及びボイラ用、船用の別によって①丸リベット、②皿リベット、③平リベット、④丸皿リベット、⑤ボイラ用丸リベット、⑥ボイラ用丸皿リベット、及び⑦船用丸皿リベットの7種類が定義され、頭部形状に丸・平・皿に加えて冷間成形リベットには無かった丸皿が追加されていました。

丸皿リベット

寸法・形状も、冷間成形リベットと同様に、頭部形状ごとに呼び径(頭部形状により10~40まで 軸径d(単位はmm)と同じ数字)と適用される長さ、また、呼び径に対応する【頭部直径dk】、【頭部高さk】、【首下の丸みr】、などが定められていました。皿・丸皿頭の【皿の角度 θ】は呼び径10~14は75°、16~25が60°、27~40は45°でした。


材料

丸リベット、一般用 皿リベット、平リベット、丸皿リベットの材料はリベット用丸鋼SV330。そしてボイラ用丸リベット、ボイラ用丸皿リベット、船用丸皿リベットはSV400とJIS規格では定められていました。

材料はこのように定められていますが、冷間成形リベットと同様、その外の材料は、受渡当事者間の協定により使用することができるとされていました。

こうしてみてきたボイラ用、船舶用の「熱間成形リベット」ですが、今は技術の進歩によって溶接にほとんど置き換えられ、ほぼ使われておりません。そして、すでにお伝えしたようにJIS規格からは「熱間成形リベット」の規格は2022年4月20日に廃止されました。


参考:航空機とリベット

航空機においてリベット類は、ソリッドリベット(ソリッドシャンクリベットSolid Shank Rivet)、とブラインドリベット(Blind Rivet)が主に使用されます。ソリッドシャンクリベットは航空機の構造部分の固定用、修理用に、またブラインドリベットは、間隙が制限されている密接箇所や裏側に回れない箇所、あるいは大きい負荷を第一条件としないような箇所に用います。

ところで、航空機の外装パネル(外板)がソリッドリベットで接合されてきたのはなぜでしょうか?

航空機の外板 リベットで留めている

航空機は軽くするためボディを構築するためにアルミニウムが多用されます。このアルミニウムは溶接による熱にさらされると弱くなります。そこで外装パネルに熱を加えないリベットによる接合が有利となります。

また、ソリッドシャンクリベットによる接合は強く、耐久性も高いことも選択理由に挙げられます。2 つのコンポーネントを溶接すると、リベット接合とは異なりコンポーネントの外部だけしか接合されません。海抜1万mを時速900㎞ほどで飛行する航空機で生じる接合部への負荷を考えると、強度や耐久性は重要です。

そして、溶接よりも検査が簡単であるのもメリットです。リベット接合は目視検査が行えますが、溶接ジョイント部の目視検査を簡単かつ効果的に行う方法はありません。そして修理に際しても、リベットならパネルを外し、修理後に元通りに再組立するのも溶接より容易です。

ボルト・ナットもパネルを傷つけず簡単に取り外し・再組立てができますが重くなり、リベットとは異なりゆるみの問題が生じます。そして何よりシンプルなリベットのほうがリーズナブルです。


現在、航空機では主にアルミニウム(Al)合金製の2 種類のヘッドのリベットが用いられています。

航空機で用いられるソリッドリベットの一つは、カウンターシャンクリベット(MS 20426 100°Countersunk Rivet 皿リベット。MSはMilitary Standard)。もう一つはユニバーサルヘッドリベット(MS 20470 Universal Head Rivet)です。

航空機用のソリッドシャンクリベット

航空機の外板は滑らかな表面仕上げ必要なので、外板締結用のリベットはカウンターシャンクリベットです。頭部の皿の角度の標準が 100°のフラッシュヘッド(Flush Head 皿頭)となっています。

もう一つのユニバーサルリベットは、主として機体の内部構造に突出頭リベット(Protruding Rivet)として使用されています。従来使用されていた複数のヘッドの形状をモディファイし、頭部が露出する部位に “ユニバーサル” に使用できるようデザインしたものです。

航空機製造のこれらのソリッドシャンクリベットのかしめ作業は、手作業では二人一組(担当と当て盤担当)で行うエアハンマによるかしめと、一人で行うスクウィーザという機械を用いた方法で行われます。またオートリベッタと言われる専用機械を用いる自動化もなされています。

もちろん、航空機には様々な構造や部材が使用されているため、ソリッドシャンクリベット以外のファスナーも用いられます。一例として、恒久的な結合用のハイロックピン(Hi-lok® Pin)とカラー(Collar)を挙げることができます。ピンの軸の径よりわずかに小さい径の穴に叩き込み、カラーを工具で回して締め付けます。穴の周囲の亀裂の発生や成長が抑制されること、および応力集中が低減されることなどにより疲労強度が向上します。材料は鋼やチタン合金が用いられます。

ハイロックピン(Hi-lok® Pin)とカラー(Collar)

また、取り外し可能な結合のために、多くの種類のボルト・ナットも用いられます。

最新の航空機は軽量化を図り燃費性能を向上させるために、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics 炭素繊維強化樹脂)などを採用することがトレンドとなっています。ボーイング787は機体の構造重量の50%を、エアバスA350ではそれ以上を占めるまでになっているようです。そのため、新時代の接合技術として、進歩の目覚ましい高性能な「構造用接着剤」が多用されています。構造用接着剤は自動車のような身近なところにも応用されています。


次回はチューブラリベット(中空リベット)についてお話ししたいと思います。


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